国内企業のDX事例10選(2021年版)

2021年9月にはデジタル庁が発足し、DXの推進を加速させようという国の気持ちとは裏腹に、接触確認アプリ「cocoa」を始めとして、国主体で開発を進めたシステムの殆どで障害が発生するなど、ITリテラシーや業界構造の弱さを露呈する結果となってしまっている現在の日本。

しかし、そんな中でも巧みにDXを推進し、働き方や事業そのものの変革にまでコマを進めている企業も多くあります。

今回は、そんな「巧みにDXを進める企業」の事例をいくつか紹介したいと思います。

1.情報を一元化し社内の利益を可視化(安川電機)

安川電機は、かつて部門により情報の管理方法が異なり、部門をまたいだデータのやりとりに手間を要していました。そこで、DX推進の1つとして、部門によって異なっていた情報の管理を社内で一元化することを推進しました。更に、社内に埋もれる情報も多く、適切な経営判断を下すことが困難な状況でしたが、この課題に対して、情報管理を一元化することで、各部門で別々で進めていた経営に関わるプロジェクト状況が把握できるようになり、社内利益の見える化を実現しました。

DX化を進める上で、情報を一元化するということは、現場の人間が慣れ親しんだ方法を変えることとなるため、不満に思う社員も多くいました。代表は、その不満を取り除くために2つの施策に取り組みました。1つ目は、「組織再編」を先行したことです。組織の再構築を先んじて行うことにより、情報を異なるコードで処理することの煩わしさをあえて感じさせ、情報の一元化を欠かせないものと思える状況を作りました。2つ目は、情報を一元化するメリットを全社員で共有したことです。代表自らが各事業部へ出向き、対話する会を開催することでDX化が欠かせないことを説明して回ったのです。
参考記事https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00394/?P=2

2.顧客の利便性向上、店頭業務のDXを両面で推進(りそなホールディングス)

「りそな銀行」を運営するりそなホールディングスが取り組むDXの事例として、顧客体験や利便性の向上を図るための「バンキングアプリ」の提供があります。どこの銀行もインターネットバンキングを整備し顧客利便性の向上や業務効率の改善を進めていますし、インターネット専業銀行という業種も現れるなど、銀行の領域でも様々なDXが推進されています。
りそなホールディングスの「バンキングアプリ」では、多様な取引を簡単操作で行えるだけに留まらず、チャットでの資産運用相談や、顧客に合った金融商品提案のプッシュ通知といった機能も備えております。

そして店頭業務の改革の1つとして、振込や住所変更などを、伝票・印鑑を不要としたペーパーレスで行えるタブレット端末を一部の店頭に設置しています。
インターネットを使いこなせない世代の対応も多い銀行ならではの折衷案で、巧みにDXを勧めています。
参考記事:https://www.resona-gr.co.jp/holdings/news/hd_c/detail/20210607_2047.html

3.既存事業に寄与する新規アプリケーション開発(全日本空輸)

全日本空輸(以下、ANA)はIT技術を積極的に活用し、新しいサービスの創出を推進しています。
その中の一つとして「乗ると元気になるヒコーキ」というプロジェクトがあります。飛行機で長時間座って、目的地に着く頃には肉体的にも精神的にも疲れてしまう乗客の方が多いという課題から生まれたプロジェクトです。
ストレス軽減などに効果があるとされて最近話題となっている、能力開発の手法でもある「マインドフルネス」を活用し、本プロジェクトのプロダクトの第一弾として「時差ボケ調整アプリ」の提供を開始しています。フライトの情報や現地での計画、スケジュールなどを入力すると、時差ボケを調整するための必要な光の浴び方や睡眠の取り方など、適切なタイミングでアプリがアドバイスをしてくれるサービスとなっています。
参考記事:https://www.anahd.co.jp/group/pr/201809/20180914.html

4.「ものづくり×デジタル」を打ち出した中期戦略(清水建設)

清水建設では、DX推進のコンセプトとして中期デジタル戦略(計画)である「Shimz デジタルゼネコン」を掲げ、社長自らがコミットした事実上のDX計画を打ち出しています。

その内容としては、「ものづくりをデジタルで」、「ものづくりを支えるデジタル」、「デジタルな空間・サービスを提供」の3本柱とし、プロジェクトの上流から下流、全ての運用に至るまで一貫したデータの連携体制を構築し、デジタルなものづくりを目指すという「ものづくりをデジタルで」、デジタルデータを活用した施工管理やロボット化、自動化、部材製作の実践等による、「ものづくりを支えるデジタル」、そして、都市・建物デジタルツインの活用による「デジタルなサービス」を提供しています。

こうした取り組みが評価され、経済産業省と東京証券取引所から「デジタルトランスフォーメーション銘柄 2021(DX銘柄 2021)」に選定される等、建設業のDXをリードする存在にもなりつつあります。
参考記事:https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2021/2021023.html

5.MAツールを活用した商談化率改善(江崎グリコ)

江崎グリコでは、名刺情報のリスト化だけでは限界を感じていた商談化率の改善に向けて、旧態依然とした営業手法から脱するべく、Pardotを活用したMA(マーケティングオートメーション)ツールを導入しました。
企業のキャンペーンなどに活用していただく「法人ノベルティ」の事業において、顧客の購買のタイミングに合わせた営業が上手くできていなかったことから、契約に至らないことが一番の課題となっていました。この課題に対して、Pardotを導入して、トラッキングやスコアリング、グレーディング機能を活用し、確度の高い見込み客の発見することで、適切なタイミングでアプローチ出来るようになったのです。
参考記事:https://www.salesforce.com/jp/customer-success-stories/glico/

6.デジタル技術で2輪車に新たな価値を付加(ヤマハ発動機)

ヤマハ発動機は、2020年からコネクテッド技術を活用した2輪車と専用アプリ(「YAMAHA Motorcycle Connect」)のグローバルな展開を開始しました。
「YAMAHA Motorcycle Connect」を利用することで、スマートフォン上でメーター表示機能の拡張、メンテンスタイミングのレコメンドなど、車両の状況を確認でき、より快適なモーターサイクルライフを実現しました。

こうした新たなデジタル技術であるコネクテッド技術の活用による既存事業への付加価値増強、ロボティクス技術の活用やモビリティの変革をいった形でDXを推進しています。
参考記事:https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2021/0608/corporate.html

7.AIによる配車の仕組みを導入(日本交通)

日本交通は、過去の乗車履歴や開催されているイベントの情報、気象情報や鉄道の遅延情報などを組み合わせ、それらの情報を基にAIが分析して、乗車需要が多い場所を予測する「AI配車」を導入しています。このAI配車によって、タクシーの車両の稼働率(実車率)をあげることが可能になりました。そして、2011年には、配車アプリを提供しました。このアプリは、地図上で乗車場所を指定し、注文ボタンをタップするだけで配車ができるため、配車を手軽に行えるようになりました。タクシーが到着する時間はもちろん、近くにタクシーがいるかどうかもリアルタイムに確認できるため顧客にとって利便性の高いものとして注目を浴びました。
参考資料:https://xtech.nikkei.com/it/atcl/column/17/120200552/120400003/

8.強みを活かした新たなDXソリューション創出へ(凸版印刷)

凸版印刷では、中期経営計画の「企業の目指す姿」で「Digital & Sustainable Transformation」というコンセプトを掲げ、全社横断型のDX推進組織「DXデザイン事業部」を2020年度に新設。更にグループのDXを推進するコンセプトを「Erhoeht-X(エルヘートクロス)」として「デジタルプリントソリューション」や「トッパンセキュアアクティベートサービス」を始めとして、デジタルマーケティングや製造のDX支援ソリューションである「NAVINECT」等の多種多様な業界に対応するDX推進サービスを企画開発、運営提供することで、社会や企業のDX化を支援しています。

また、自社における業務プロセスのDX推進や、DX化に向けた環境整備に継続的に取り組むとともに、これらの取り組みやその進捗状況等についても、積極的な情報開示を行っています。
参考記事:https://www.toppan.co.jp/news/2021/06/newsrelease210608_3.html

9.ものづくりの業界にDXプラットフォームを展開(ミスミ)

ものづくりの現場に密接な事業を持つミスミでは、見積もりや発注をAIの活用により自動的に行い、設計データから加工プログラムを自動で生成する「meviy」というソリューションを開発しました。

「meviy」は3DのCADデータを認識すると同時に、見積もりを回答することができます。3Dの形状特徴に基づいて公差を自動で付与するので、従来紙図面で行っていた公差の寸法指示は不要となり、効率化されます。

まずは金型部品向けにサービスを提供しましたが、その後の機能・商品の拡充で多くの業界に対してソリューションを提供しています。

「meviy」の導入によって、3DデータからAIが自動で見積もりや発注をかけられるため、顧客へのお届け期間を2週間以上短縮し、短納期を実現しました。
参考記事:https://jp.misumi-ec.com/contents/newsrelease/2016060901/?bid=bid_jp_m_press_20160609_8787

10.ECビジネスの配送効率を最適化(セブン&アイ・ホールディングス)

セブン&アイ・ホールディングスでは、DXの推進組織として「グループDX戦略本部」を2020年4月に発足させました。それに伴い、専門知識や経験を有する人材の採用・教育、既存の社員に対して、AIの活用を推進し能力開発する「AI人財育成プログラム」を実施しています。

グループ横断で取組むDX施策の内容をまとめた「グループDX戦略マップ」を策定したり、DX戦略を「新たなお客様体験価値の創造」をコンセプトとした【攻めのDX】と、「セキュリティと効率化」をコンセプトとした【守りのDX】の2つに分け、AIの活用と積極的な内製化により各施策を推進したりと、組織構築や意識統一からしっかりとDXを組織戦略として進めています。

そしてそれらを加速させる施策として、グループ共通のECビジネスの配送効率最適化を図るための「ラストワンマイルDXプラットフォーム」を構築し、AI技術の活用によって「(1)車両・ドライバー (2)配送料 (3)配送ルート (4)受取場所」の最適化を実現しています。
参考記事:https://www.7andi.com/company/news/release/18954.html

まとめ

DXの本質は、デジタル技術の導入そのものを目的とするのではなく、デジタル技術を活用した新たな価値の創造です。
そしてその成功の為には、経営層がコミットし、組織全体を動かす意思をもって取り組む必要があります。
上記の事例以外にも、中小企業でもDX化を軌道に乗せている企業はいくつもありますが、いずれも経営層がしっかりコミットしていることは共通している事項でしょう。

その上で、デジタル人材の確保(採用や教育)や既存事業・業務の課題の洗い出しが必須となってきます。

こういった事例を参考に、自社のDXに活かせる情報が無いか、考えてみると良いでしょう。

【執筆者】
川原翔太
株式会社WhiteBox 代表取締役
株式会社CEspace 取締役
情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
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